カンザスシティ連邦準備銀行が実施した調査は、職場での金融教育が個人と企業双方に良い影響を与えることを示しました。
カンザス連銀の調査の概要
カンザス連銀は、以下の3つのプログラムをカンザスシティ、およびオマハ地区の4社の従業員700名に対して調査しました。
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成人教育に熟練した講師によるクラス授業(週1回・全9回)。
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認定ファイナンシャルプランナーとの個別相談(家族参加も推奨)。
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継続的なフォローアップ(電話・メール等を含む)。
金融教育がもたらす個人的な効果
調査によれば、金融教育プログラムを受講した従業員は、家計管理の姿勢に大きな変化を見せました。
クレジットカード残高を毎月完済する人の割合は50%増加し、遅延支払いも減少しました。
同時期、全国的にはカード債務が+5.8%増えていたのに対して、調査対象社は14.5%減少しました。
ある小売系企業では401kのローン申請がほぼ消滅しました。
これも同様に、全国的にローン利用が増えていたのと対照的な結果になりました。
同企業では、401k参加率は調査前は65%でしたが、受講後は100%が参加になりました。
貯蓄行動では401kの残高が受講後3年で70%増加。IRA残高が53%増加、非退職口座は31.4%の増加になりました。
受講後2-3年で、自分の金融状況に「満足」と答える従業員が大幅に増加しています。
受講者からは「将来に向けた計画を立てたことで安心感が得られた」「家族との金銭的な衝突が減り、精神的に楽になった」といった証言が寄せられました。
金融教育は、家計改善だけでなく、家庭や人間関係にまで良い影響を及ぼすことが分かります。
金融教育がもたらす企業の効果
従業員の金融状況は、実は生産性にも直結します。
調査では、ある企業では金融教育プログラム導入後に401(k)ローンや給与前借りの申請がほぼ消滅し、管理コストが削減されました。
また、医療費用のフレキシブル・スぺンディング・アカウント(FSA。雇用者が提供する福利厚生制度の一つで、従業員が医療関連の支出に備えて税引き前の給与を積み立てられる仕組み)利用が増え、企業の社会保障税負担が軽減された例もあります。
(企業はFSAに拠出された額について、社会保障税(FICA税やメディケア税)を負担しなくてよいので、従業員がFSAを利用すればするほど、企業の税負担が減る)
小売企業の例では、利用率は45%から70%に上昇しています。
さらに、従業員の金融ストレスが減ったことで欠勤が減少し、職場の雰囲気やエネルギーレベルが向上したと人事担当者は述べています。
「従業員がより前向きになり、仕事への集中度が上がった」との評価もあり、企業にとって金融教育は「従業員満足度向上」と「コスト削減」の両立を可能にする施策といえます
職場の金融教育は従業員と企業の双方にメリットを生み出す
このカンザス連銀の調査では、債務管理の改善(カード利用抑制、ローン減少)、貯蓄率の上昇(401k、IRA、非退職口座)、退職準備行動の強化(参加率・拠出率の向上)、従業員満足度とストレスの軽減で、数値的な改善が見られました。
この様に、職場の金融教育は従業員と企業の双方にメリットを生み出します。
金融教育経営を広げ、働く世代のお金の悩みを解消し、生産性を高めて日本の企業の成長に貢献しましょう!