キーワード③Financial Wellness(経済的豊かさ)とは

キーワード③:Financial Wellness(経済的豊かさ)

ファイナンシャル・ウェルネス(Financial Wellness)とは、物心ともに豊かな状態を指します。単に資産額や収入の多さを指す概念ではなく、経済的に安定し、自分の価値観やライフプランに沿って安心して生きられる状態を意味します。

お金があるだけの「リッチ(ファイナンシャル・サクセス)」とは異なり、安心感・安定感・快適さ・満足度・幸福感を含み、現在と将来の両方を満たす状態です。この状態が、業務への集中力やモチベーションを最も高め、企業の生産性向上に貢献します。

これは、いわゆるファイナンシャル・サクセス(経済的成功)と対比することで、より明確になります。

ファイナンシャル・サクセスは、資産○億円、年収○千万円といった外部基準に基づく数値目標を追求しがちであり、高リスク・高プレッシャーを伴う傾向があります。

成功の基準が他者比較に置かれるため、目標を達成しても次の目標が現れ、満足が持続しにくい「終わらないゲーム」に陥りやすい構造を持っています。また、判断軸が定量指標に偏ることで、ストレスが増幅しやすい点も特徴です。

一方、ファイナンシャル・ウェルネスは、身の丈に合った現実的な目標設定を重視し、現在の安心感や充足感と将来への安定性の両立を目指します。重視されるのはお金の「量」ではなく「質」であり、不安なく楽しく生活できているか、自分自身が納得できているかといった内面的な基準が重要になります。指標は外部との比較ではなく自己納得であるため、過度なストレスが生じにくい点が大きな特徴です。

このファイナンシャル・ウェルネスの状態は、従業員の業務への集中力やモチベーションを高め、結果として企業全体の生産性向上に貢献します。そのため、金融教育経営の目的は知識の習得そのものではなく、従業員一人ひとりのファイナンシャル・ウェルネスを実現することに置かれるべきです。金融教育はあくまで手段であり、本質は行動変容を伴う支援にあります。アメリカの平均残高が示すように、金融状況は知識の多寡ではなく、日々の行動の結果として形成されます。

また、金融教育経営における基本的なスタンスは「パートナーシップ」です。一方的に正解を押し付けるパターナリズム(上から目線の指導)は、もはや時代に適していません。個々人の価値観やライフプランに寄り添い、長期的な生涯所得と生活の質を支援していくことこそが、金融教育経営の本質です。